放送開始日の直前、
武田
、フジテレビで第1話の試写会に立ち会った。
僅かな時間で作った作品には、
いろいろと問題があった。
あまりのことに、武田、別所にまくし立てた。
「
別所
、これじゃダメだよ、この部分撮りなおして。
」
「わかりました、取り直します。」
武田の到底無理な要求に、別所
、おとなしく頭を下げるしかなかった。
うしお、このやりとりを聞いて愕然とした。
撮りなおす時間など有るはずも無かった。
困惑するうしおを後目に、別所、しばし押し黙ったまま考え込んだ。
「鷺巣 さん、このまま放送しましょう。」
突然頭を上げた別所の口から、予想だにしない言葉が飛び出した。
別所、秘策があった。
昭和46年1月2日夜7時、
ついに
「
宇宙猿人ゴリ
」
の放送が開始された。
後にライバルとなる円谷の「帰ってきたウルトラマン」、東映の「仮面ライダー」より、実に3ヶ月も早い放送開始であった。
うしお
、感無量の面もちで自分の特撮作品が放送されるのを見守った。
しかし、
別所の仕事は終わっていなかった
。
武田が指摘した問題のシーンの近くになると、別所、武田の自宅に電話を入れた
。
電話にでた武田に向かい、
別所はどうでもいい話を延々と繰り返した。
別所の辻褄の合わない話に、武田、終いには怒り出した。
しかし、その時テレビでは、
撮り直しを指摘されたシーンの放送がすでに終わっていた。
別所の秘策が当たった瞬間であった。
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