うしお 、とにかく速く仕事をこなすスタッフを集めた。
脚本は、短時間で脚本を上げることで有名な
辻真先
に依頼した。
後になって、 辻 が当の「 巨人の星 」の脚本家 であったことに気づき愕然とした。
それでも 辻 は、 約束通り脚本を仕上げてきた。
スペクトルマン の造型を最初に依頼されたのは、 ウルトラ怪獣 で有名な
高山良策であった。
しかし、 高山 は ウルトラマン の仕事で忙しく、代わりに「 異人館工房 」を紹介した。
異人館工房うしお と 別所 に囲まれながら、一日で スペクトルマン の原型を完成させた。
鈴木徹 と 井上繁 、
監督の人選も難航した。
幾人かに声をかけたが、製作日数を聞くと皆逃げ出した。
「さすがになあ、こんなバカげた仕事を受けるヤツはいないか。」
うしお 、ため息をついた。
その時、
しばらく考え込んでいた 別所 、ハタと思いついたように言った。
「 土屋 はどうだろう。彼は 新東宝 の出だから、何とかしてくれるんじゃないか。」
別所 の口から出たのは、以前、「 マグマ大使 」、「 怪獣王子 」で監督を務め、 うしお 達と気心の知れた
土屋啓之助
の名前であった。
「 土屋 くんは 新東宝 だったか。ならば、驚かないかもしれないなあ。」
早速、 うしお 、 土屋 に連絡を入れた。
うしお 、
「かなり厳しい日数だが監督を受けてくれないか。」
土屋啓之助 、さすがに驚いた。
土屋啓之助 さん:
「いやあ、 新東宝 と言うところは凄いところでしてね。まず、 撮り直しが禁止 でした。そのくせ、若くてギャラの安い俳優ばかり使うもんですから、NGは多い。えっ、どうしたかって、そりゃ、 脚本の方を合わせた んですよ、辻褄が合うようにね。まあ、私も東宝を追い出されて、『なにくそ』ってのが有ったから出来たようなものです。」
「だから、 うしお さんに ゴリ を頼まれたときもですね、低予算、短時間なら 新東宝 出身の俺だろうな、って妙に納得したものです。」
土屋啓之助 、
「 新東宝 の時よりは、マシかな。何とかなりそうだ。」
やれる自信はあった。
そしてなによりも、 新東宝 が倒産し、路頭に迷っていた自分を拾ってくれた うしお に、恩をかえしたかった。
今、窮地に陥っている うしお を助けたかった。
土屋 、
「 うしお さん、今すぐカメラを一式貸してもらえませんか。スタッフが集まるまで待ってられませんからね。 スタッフを集めながらロケしたいんです。」
うしお 、さすが 新東宝 出と感心した。
監督が決まった。
ついに、 「 宇宙猿人ゴリ 」 の製作がはじまった。
放送開始まであと 20 日を切っていた。
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