「
宇宙猿人ゴリ
」
の放送決定を受け、早速
武田
は局内の
ある男
を呼んだ。 「この
修羅場
を乗り切れるのは、やはり
彼
しかいないだろう。」
武田
はこの男に賭けてみることにした。
男は、
武田
に呼ばれた瞬間、
「俺に局長から声がかかると言う事は……決まったな。」
と直感した。
別所孝治
、
「
鉄腕アトム
」以来、
うしお
とともにフジテレビの
ピープロ
作品を作り続けてきた男であった。
「当時の自分は
鷺巣
さん(
うしお
の本名)の弟子になりたかった。」
後生、彼は冗談めかしてよく語っていた。
予想通り
武田
の話は、
「
宇宙猿人ゴリ
」の制作が決定されたことであった。
「上の方はあまり期待してないようだが、
別所
くん、一つ気張って見返してくれや。」
武田
はそう言って、
別所
を励ました。
別所
、また
うしお
と仕事ができることがうれしかった。
ところが、
放送開始予定日を聞いて
愕然
とした。
昭和45年1月2日
。
その日をいれて、
あと
25
日
しかなかった。
局やスポンサーを説得してくれた
武田
には悪いが、
常識的にとても間に合うような期日ではなかった。
「
無理だ
。だが、
鷺巣
さん
(
うしお
の本名)
なら。」
別所
、静かにつぶやいた。
うしお
にも、
武田
から連絡が入った。
25
日間
で特撮番組をつくれ。
それは、
到底無理な要求
であった。
しかし、
うしお
、その話を受けた。
ここまでがんばってくれた
武田
の面前で断るわけにはいかなかった。
そして何より、特撮番組を作れることがうれしかった。
「
やるしかない
。」
うしお
、覚悟を決めた。
伝説が始まった
。
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