そのころ、
「
巨人の星
」
は順調に放送回数を重ねていた。
既に、巨人軍のV6も決まり、その地位はいよいよ安定したかに見えた。
対するフジテレビ、
同じ時間帯に、女空手を題材にした
「
紅い稲妻
」
(主題歌:堀江美都子)
をぶつけて対抗した。
しかし、案の定、
視聴率の低迷
に喘ぐ結果となった。
武田
、毎週、関係スジから上がってくるクレームの対応に翻弄された。
スポンサーが決断するのも時間の問題だった。
そんな折り、
「
TBSと、円谷が動いている
。」
驚くべき情報が、
激震
となって、フジテレビ編成局を貫いた。
「
『
ウルトラマン
』をぶつけられたらまずい。『
巨人の星
』どころじゃないぞ。」
武田
、身体の奥底に、過去、
「
ウルトラセブン
」
にしてやられた苦い思い出がよみがえった。
「何とかして、円谷より先に
うしお
さんとこの企画を土俵に上げなければ。」
武田
、焦りを覚えた。
12月、
ついに、
「
紅い稲妻
」
(主演:沖わか子)
の
打ち切り
が決定した。
武田
の動きは素早かった。
「
紅い稲妻
」
(必殺技:くれない三段蹴り)
の穴埋め番組として、「
宇宙猿人ゴリ
」をねじ込んだ。
「今はスポ根の時代だよ。怪獣ものが、流行るのかね?」
またしても局側は難色を示した。
武田
、黙っていなかった。
「いつまで『
巨人の星
』の真似を続けるつもりですか!
真似とパクリでは
視聴率競争に勝てない
って事が、わからんのですか!」
武田
の熱意に押される形で、局側もついに
「
宇宙猿人ゴリ
」
の制作に
GO
サインを出した。
「これで
うしお
さんに
顔
がたつ。」
武田
はその瞬間、初めて
安堵
の笑み
を浮かべた。
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